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犬の歯石と鼻水やくしゃみとの関連について

 

てらい動物病院 院長の寺井寛郎です。
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今日は歯周病について、歯石が沈着しているわんちゃんで、特に犬歯~前臼歯に歯石が沈着しているケースについて説明させていただきます。

「歯石」と「鼻水」や「くしゃみ」は一見何か関連があるのか?と思われがちですが、実はこれらは深くかかわっています。

口の中は頭蓋骨(骨)によって口腔(口)と鼻腔(鼻)とに隔てられています。

まず、歯周病とは、歯垢歯石が原因で周囲の歯肉に炎症が起こり、そして歯を支持している周囲の骨を溶かしながら病気が進行します。そのため、歯自体は問題がなくても、重度になると歯がぐらぐらして抜け落ちてしまう病気です。

歯周病で自然と歯が抜けてしまう状態とは、歯の周囲の骨が細菌で溶けてしまい歯が支えられなくなるため、弱い力でも抜け落ちてしまうというような状態です。

その抜け落ちた歯の周囲の組織は、細菌で炎症を起こしていたり、骨そのものが溶けて無いため、骨の中に空洞が出来ることになります。

その空洞が大きければ、口と鼻の場所が近いため、口と鼻がつながり、口腔鼻腔(こうくうびくう)フィステルと言われる口から鼻の中に通じる大きな穴が開いた状態になります。

さてここからが、鼻水・くしゃみとの関連です。

犬歯や前臼歯の歯石が重度になってくると、この口腔鼻腔フィステルが起こり、口の中の食べ物や飲み水が細菌と一緒に、口と鼻の間にできた穴の中に入ってしまうため、くしゃみと一緒に膿状や時には血混じりの鼻水が出てしまう事になります。

これで、歯石と鼻汁やくしゃみとの関連について、ご理解頂けたでしょうか?

自然と歯が抜け落ちたわんちゃんが、くしゃみ・鼻水を頻繁にしている場合、このような口腔鼻腔フィステルを起こしている場合がありますので、ご注意ください。

実際の治療では、中高齢のM.ダックスに多く、犬歯の歯肉が大きく後退するような大きな歯石や犬歯の口蓋(口の中)側の歯石、前臼歯がぐらぐらしているわんちゃんは、この口腔鼻腔フィステルの発生リスクが高くなっています。

>口腔鼻腔フィステルの症例はこちら

治療方法は、通常の麻酔歯科処置に比べると少々やっかいです。

まず、このような状態のわんちゃんの口の中は、もともと全体がひどい歯周病のため1つの症状の治療だけでないことが多いです。

そのためまず麻酔下でスケーリングをして、口の中全体をきれいな状態にしてから、口腔内レントゲンやプロービング検査でしっかり口の中の状態を確認して、治療計画を立て、優先順位の高い治療内容から処置を実施します。

口や鼻の無くなった骨を新しく作ることはできないため、口の中の粘膜を切りとり、穴をふさぐように縫合します。

このような状態にならないよう、定期的に動物病院で口腔内検診を受け、わんちゃんの口の中も健康な状態で維持してください。

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